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「銀、コレを見てみろ」

ある日の平泉。

ゆったりと縁側でくつろいでいる銀のもとへ、泰衡が大きな鉢植えを持ってやってきた。

「どうしましたこれは?」

「花の鉢植えだ。先日父上の友人が土産にと持ってきたのだが・・・・・どうにも育てられないとかいって押し付けてきてな。」

「ちょっと元気がないようですね?」

「水のやり方が悪かったのかしおれてきてるような感じがするんだ。私よりも銀の方がこういったものの扱いは上手だから少し見てくれるか?」

「いいですよ。では、別の鉢に植え替えて様子を見てみましょうか・・・・一回り大きいのがいいですね。」

泰衡は雑色(召使)に別の大きな鉢を持ってくるようにいいつけ、銀は鉢から株を出そうとしたが中々出すことができない。。
ようやく出して見ると根がかなり回っていたようで、ぎっしりと鉢に詰まっている。

「・・・これは株が育ちすぎて根が全体にまわってしまっていたんですね・・・・・コレでは元気がないのもうなづけますよ泰衡殿。」

「そうか。何にせよ原因が分かってよかった。」

そういうと雑色に持ってこさせた大降りの鉢に根をほぐした株を植え替えて土をかぶせた。
うまくいけばこの鉢に根を張ってまた元気になるはずだ。

「そういえば泰衡殿、コレは何の花が咲くのですか?」

「『月下美人』とか言う花らしい。何でも満月の月夜にしか花を咲かせず、朝になるとしぼんでしまうという幻の花だ。」

「満月の夜・・・・・?」

「儚いな。一夜で終わってしまう花ぞ。」

儚い月下美人・・・・・・まるであの人・・・・・・・・・・・・十六夜の君のようだ。
銀は思わずポツリとつぶやいた。

「十六夜の月夜にも咲くのでしょうか・・・・・・・・・」

「ん?」

「いえ、なんでもありませんよ。さて、終わりました。これどうしましょうか・・・・・?」

「・・・・・どうしたもんかな。」

「泰衡殿、もしよければこの鉢植え私にいただけませんか?」

「かまわないが・・・・」

「ありがとうございます。大事にしますね」


いつか十六夜の月が昇った時に咲く花をあの人と一緒に見ることが出来るのならば・・・・・・・・きっとできないだろうから、せめて共寝の道行きに咲いて欲しい花・・・・・・・・・・・・・・・・・。

月下美人・・・・・・いえ、月の光に咲く花。


月光花





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